大阪交響楽団第258回定期演奏会

久しぶりのコンサートです。
◆高橋直史/大阪交響楽団/並河寿美
・Hiller, Ferdinand : Ouverture zu Demetrius Op.145
 Schönberg, Arnold : 6 Lieder Op.8
 Schumann, Robert : Symphonie Nr.1 B-Dur Op.38 Frühlings-Symphonie
・2022.09.02 19:00 The Symphony Hall
 高橋直史首席客演指揮者就任記念 ”音楽と文学”
事前学習せずに聴きに行きました。シューマンはいいとして、ヒラーのデメートリウスというのは誰だろう、アンディゴノス朝マケドニア王デメトリウスⅠ世がまず浮かんだのですが、ディアドコイ時代に活躍した王とはいえ、ちょっと華やかさに欠けます。私が知らないだけで誰かが劇的な文学作品を作っているのかも知れません。
プログラムを読んでみると、何のことはないロシア・スムータ時代の偽ディミトリーのことでした。帰宅後、WEBで検索したのですが、曲の背景に関する記事は見当たりませんでした。時間があればシラーの戯曲でも読んでみようと思います。
曲ですが、結構技法を凝らした内容でありながらあまり印象に残らないのはどうしてでしょうか。オーケストレーションに問題があるといわれるシューマンの春の方がずっと印象深いというのはロマン派の作品の皮肉です。
余談ですが、シューマンとの繋がりとしては、かの有名なイ短調のピアノ協奏曲がヒラーに献呈されています。ヒラーは当時の著名なピアニストだったようでショパンも作品15の夜想曲(4~6番)を献呈しております。
シェーンベルクの歌曲はなかなか難解で私の語れるものではありませんが、後半3曲の後奏の長さが印象的でした。歌曲はそもそも歌詞があってそれに音をつけたもの。勿論、前奏・後奏があっても問題ないのですが、長い後奏となると、作曲者がその余韻とも言える部分にどのような思いを込めているのか気になります。6曲が終了したとき、高橋さんはかなり長い間(20秒以上?)終音時の姿勢を崩さずじっと立っておられました。余談ですが、第2曲の紋章入りの盾/Das Wappenschildでは打楽器が活躍したのですが、シンバルはサスペンディド・シンバルも兼ねておりその持ち替え時間が短くバチを持ったままクラッシュ・シンバルの演奏をしておられました。
シューマンの春の実演を聴くのは何年ぶりでしょうか。非常に新鮮でした。また、この曲で高橋さんの指揮ぶりを知ることができたのですが、テンポは中庸、スケルツォは少し遅めのように思えました。要所要所で思いを込めてしっかりと音を確認しながら演奏しておられたようです。第4楽章のホルンの独奏とそのあとのフルートとファゴットとの掛け合い、今日ここで聴くことができて本当に良かったと思いました。
一緒に聴いた友人と終演後「反省会」をしたのですが、今回の面白い曲目や演奏内容など、いろいろ音楽に花が咲きました。

1件のコメント

  1. […] 大阪交響楽団の定期演奏会でデメートリウス(ディミトリー)に接したので、少し復習しました。時代はロシアの王権を確立したといわれるツァーリ、イヴァンⅣ世の時代。同族や有力貴族を排除し強力な王権を確立したのはいいのですが、「雷帝」と言われ猜疑心が強く幾分激高気味であったイヴァンⅣは癇癪から皇太子であった同名のイヴァンを撲殺してしまいます。イリヤ・レーピンの作品にイヴァン雷帝とその息子がありますが、息子の亡骸を前に呆然と我に返るイヴァンのうつろな眼を悲劇的に描いております。皇太子が亡くなり、イヴァンⅣ世にはフョードル、ディミトリーという2人の息子が残されますが、フョードルは病弱かつ知的障害の傾向、ディミトリーはまだ若年、加えてディミトリーは7回目の結婚で生まれた息子。ロシア正教では3回目以降の結婚は認められておらず、庶子として教会から反対される可能性があります。こうした不安材料を残して1584年イヴァンⅣ世は逝去しフョードルがフョードルⅠ世として即位します。イヴァンⅣ世は有力な重臣5名を指名しフョードルを補佐するよう遺言を残しましたが、5人は権力争いを始め、ボリス・ゴドゥノフが勝ち残ります。因みに、ボリスは妹イリナをフョードルⅠ世の妃とされるなど、元来イヴァンⅣ世の信任が厚かったといわれています。ボリスが権力を掌握する中、1591年フョードルⅠ世の9歳の弟ディミトリーが領地のウグリチで急死します。死因は喉の切り傷、いわゆる怪死です。癲癇を持っており、ナイフで遊んでいるとき発作が起きて喉を切ったとも、ボリスが暗殺したとも言われます。結局、フョードルⅠ世は嗣子がいないまま1598年死去します。イヴァンⅣ世の息子達がいなくなり、有力な対抗者がいない中、ボリス・ゴドゥノフが身分制議会によりツァーリに選出されます。ボリスの治世には災害が頻発し、それによる暴動や反乱で世の中が乱れます。そうした中出現したのが、死亡したディミトリーが生存していたとしてディミトリーを名乗るいわゆる「偽ディミトリー」です。偽ディミトリーは3人いますが、Ⅰ世がそれなりに活躍したので一番有名です。ポーランドの干渉もありロシアは未曽有の混乱期スムータを迎えます。さて、音楽としては、次の3作品がまず頭に浮かびました。①プロコフィエフエフ:イヴァン雷帝(カンタータ)②ムソルグスキー:ボリス・ゴドゥノフ(歌劇)③ドヴォジャーク:ディミトリー(歌劇)①はプロコフィエフの映画音楽。戦艦ポチョムキンやアレクサンドル・ネフスキーで有名な名監督エイゼンシュテインの作品、3部作として製作されたのですが、第3部は未完に終わったようです。どうも完成いているのはイヴァンⅣ世が権力を掌握するまでで、スムータの前兆となるような晩年の悲劇は未完部分のようです。なお、プロコフィエフはアレクサンドル・ネフスキーのための映画音楽も作曲しており、有名なカンタータはそこから抜粋されたものです。②はムソルグスキーのオペラ、偽ディミトリーやマリーナ、クセニヤといった③に登場する人物も登場しています。また聖愚者といったロシア独特の存在が語り部的存在で登場しており、最終場面ではロシアの行く末を案じるようなアリアを歌っております。いくつか版があり、最近はリムスキー=コルサコフ版がよく上演・録音されるようです。カラヤン盤もそうですね。③はドヴォジャークの晩年の作品。テクストはシラーのデメートリウスとフェルディナント・ブシェティスラフ・ミコヴェツ/Mikovec, Ferdinand Břetislavのティミトル・イヴァノヴィチ/Dimitr Ivanovečのようです。ドヴォジャークはこの作品に執着していたようで、何回か改訂していますが、劇的な成功は得られなかったようです。舞台はボリス・ゴドゥノフの逝去時点から始まり、モスクヴァに登場した偽ディミトリーはロシア派とポーランド派との間で権力を掌握します。しかし、ポーランド兵に襲われたクセニア(ボリス・ゴドゥノフの娘)を助けたことからクセニアとの関係に変化が生じていきます。戴冠式を行ったものの、自分の後ろ盾でもあるマリアナ・ムニシュコヴァーから疑義を持たれ、最後は偽者であることを認めシュイスキーに射殺されて幕となります。ディミトリーの良心の葛藤が描かれているとのことですが、実際のところはどうなのでしょうか。一度、舞台を見たいものです。ディミトリー以降の時代においても、・グリンカ:皇帝にささげた命(ミハイル・ロマノフ)・ドニゼッティ:ピエトロ大帝(ピョートルⅠ世)とロシアの歴史を題材にした音楽作品は続きますが、現代での人気ということでは①~③には少し劣るようです。これを期に3曲を聴こうとしたのですが、イヴァン雷帝のCDは行方不明で聴くことができませんでした。カラヤンのボリス・ゴドゥノフも。◆Mussorgsy, Modest Petrovich : Boris Godunov・Naydenov, Asen / Chorus & Orchestra of the Sofia National Opera Dimitrov, Dimiter / markov, Sabin / Bodounrov, Lyubomir etc.(リムスキー=コルサコフ版)◆Dvořák, Antonín Leopold / Dimitrj B.127※・Albrecht, Gerd / Česká filharmonie Vodička, Leo Marian / Drobková, Drahomíra / Hajóssyová, Magdaléna ua※一応、初稿の番号をつけております。 […]

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